みみの病気
急性中耳炎
原因
風邪をひいた際に、のど・鼻の奥にある細菌・ウイルスが、耳管(耳と鼻をつなぐ管)を経由して鼓膜の奥の中耳に入り、感染を起こすことで生じます。お風呂やプールなどで耳に水が入っても、中耳炎にはなることはありません。生後6ヶ月〜6才位の子どもさんに多い病気です。それは、乳幼児の耳管は大人の方に比べ太く短いため鼻から細菌などが中耳に侵入しやすいためです。
症状
①耳痛
②耳のつまる感じ・難聴
③発熱
乳幼児の場合、不機嫌になる、耳に手を当てて泣くといった症状で痛みを表現する場合が多いです。炎症が進行し、鼓膜に穴が開くと、耳漏(みみだれ)として出てくることもあります。
治療
中等度以上では、抗生物質・消炎鎮痛剤による治療を行います。重症の場合や、高熱・痛みが強く、中耳に膿が多量に貯まって鼓膜がしっかり腫れている場合は、鼓膜切開といってメスで鼓膜に小さい穴をあけて、膿を吸い出すこと場合もあります。また、鼻やのどの炎症を抑える処置や吸入、内服薬、点耳薬による治療も必要となります。
予後経過
通常は治療開始後、数日〜1週間ほどで急性炎症はおさまります。 その後、中耳に滲出液がたまる滲出性中耳炎に移行する場合があります。 この場合は、滲出性中耳炎の治療が必要になりますので、完治までは時間を要します。
滲出性中耳炎
原因
滲出性中耳炎は、中耳(鼓膜の内側)に水様〜粘性の滲出液がたまる疾患です。 耳管(耳と鼻をつなぐ管)が正常に機能しないことにより生じます。 幼稚園から小学校低学年の小児に多くみられます。耳鼻科で「水が溜まる中耳炎」とか、「痛みがない中耳炎」と言われることもあるかもしれません。 急性中耳炎が完全に治りきらずに滲出性中耳炎へ移行することも多いです。
症状
急性中耳炎とは異なり、痛みや発熱はありません。
小さなお子様の場合は、以下の症状に周囲の大人が気づいてあげることが大事です。
①耳のつまる感じ
②大きな声でしゃべる(自分の声がこもって聞こえるため)
③TVの音が大きい・声をかけても振り向かない
治療
①保存的治療
内服薬を飲むことや、鼻をきれいにする処置をおこないますが、一度では終わらず通院が必要な場合が多いです。
特に、小児の滲出性中耳炎は繰り返すことが多く、通院回数も多くなりがちです。
②外科的治療
鼓膜切開や鼓膜換気用チューブという小さなチューブを鼓膜に留置する手術があり、どちらも中耳に貯まっている液を外に出す治療です。
慢性中耳炎
中耳炎を繰り返し発症したり、治りが不十分であったりすると鼓膜の穴が開いたままになってしまう中耳炎です。その場合、鼓膜の穴から細菌が入り込み、膿や耳漏が出るようになります。症状としては難聴・耳鳴・耳漏があります。
主に2種類の治療方針があります。
治療
①保存的治療
耳漏を止めてなるべく細菌に感染しないようにします。耳洗や耳浴を行います。耳浴とは、抗生剤を耳から入れて、そのまま横になった状態を保つことで治療する方法です。
②外科的治療
中耳の状態によって治療が変わります。鼓膜の穴が小さく程度が軽い場合は鼓膜形成術が行われます。そうでない場合、すなわち難聴が改善されない鼓膜に空いた穴が大きすぎる、炎症がひどいときは鼓室形成術を受ける必要が出てきます。
真珠腫性中耳炎
原因
真珠腫性中耳炎とは、鼓膜の一部が内側(中耳側)に凹んで袋状になり、そこに耳垢などがたまって真珠のような塊(真珠腫)ができる病気です。この真珠腫が大きくなるにつれて炎症を伴い、内耳や周囲の神経を破壊していきます。
先天性のものもありますが、ほとんどは後天性です。先天性は胎児の発生段階で中耳に上皮が迷入して生じます。後天性の場合、はっきりした原因は不明ですが、中耳の換気不全が原因と言われています。滲出性中耳炎や、鼻すすり鼻炎、などにより鼓膜が中へ落ち込み、そこに、上皮組織がゆっくりと真珠色の固まりをつくっていきます。
症状
真珠腫はゆっくり進行していくため、初期には症状はありません。
大きくなった場合、中耳やその周辺の大切な組織を、溶かしてゆきます。具体的には、難聴、めまい、顔面神経麻痺、頭蓋内炎症です。真珠腫に細菌感染が起きると、悪臭を伴った耳漏が現れます。
治療
①保存的治療
鼓膜が少しへこんでいるなど、難聴や合併症がなく、進行がゆっくりの患者さんの場合、点耳薬を使うなどの保存療法で進行の度合いを見ることもあります。しかしながら、ほとんどの症例は以下の外科的治療が必要となります。
②外科的治療
真珠腫を確実に取り除き、中耳内の清掃と破壊された耳小骨の連鎖を再建するための手術「鼓室形成術」を行います。手術は数回に分けて行う場合もあります。
外耳炎
原因
耳かき、耳いじり、プールなどによる刺激がきっかけとなり外耳道に炎症が起こります。痒みのため頻繁に耳をいじり、その刺激が皮膚を傷つけ、炎症を拡大するという悪循環に陥ると慢性化します。特に気温が高い夏は、この病気にかかる方が急増します。
症状
耳の痒み・痛み、耳だれ、耳閉感、耳が臭うなど。急性では痛みを伴い、慢性では頑固な痒みを伴います。
治療
外耳道を清掃、洗浄します。細菌が原因の場合は抗生剤やステロイドが含まれた軟膏や点耳薬を、真菌が原因の場合は抗真菌薬を塗布します。
めまい
良性発作性頭位めまい
寝ていて寝返りをうつ、頭の向きを変えると起きる「めまい」です。
めまいが起きても、しばらくのあいだ同じ姿勢でいるとおさまります。
内耳にある耳石(じせき)が原因と言われています。通常、数週間〜数ヶ月でおさまります。
メニエール病
めまい・耳鳴・難聴を繰り返す内耳性疾患です。
内耳のリンパ水腫が原因と言われています。過労やストレスや気圧変化などがきっかけで起こることが多く、同じような症状を「繰り返す」のが特徴です。
几帳面な性格の人がなりやすい病気です。めまい発作時は、薬を服用して2週間くらいは無理をしないようにしましょう。
前庭神経炎
突然激しい回転性の「めまい」が起きます。
内耳にある前庭神経の炎症によるものです。原因はウイルス感染と言われています。
通常、激しいめまいは数日以内に落ちつき、ふらつきのある期間を経て治癒します。
前庭神経炎を繰り返すことは、ほとんどありません。
耳あか
正式名称は 耳垢栓塞(じこうせんそく) といいます。
耳垢には、乾燥した耳垢「乾性耳垢」と、どろっとした軟らかい耳垢「湿性耳垢」の2種類があります。これらは生まれた時から遺伝的に決まっているものであり、途中で変化するものではありません。日本人の約7割が乾性耳垢で、残りの約3割が湿性耳垢と言われています。 西欧人では日本人と違い約9割が湿性耳垢です。そのため湿性耳垢の多い西欧には、日本でいうところの「耳かき」が普及してしません。湿性耳垢は、通称「あめ耳」「ねこみみ」とも呼ばれていますが、湿性であるから病気と言うことではありません。 耳垢のたまる速度は、その人の代謝によりますので体質による個人差がかなりあります。
成人で乾性耳垢の場合:耳垢は自然に排出されるようになっているので、耳掃除はほとんどしない or 1か月に1~2回で十分です。
子供・お年寄り・外耳道が狭い方は耳垢が溜まりやすく、耳掃除が必要な場合が多いです。
しかしながら、耳掃除する際に以下の注意点があります。
・きれいにしたいからとゴシゴシと擦ってはいけません
・奥まで入れて、ガリガリと掻いてもダメ(耳の入り口から1cm以上入れない)
上の写真は乾性耳垢の患者さんで頻回の耳掃除が原因で、本来「かたまり」であるはずの耳垢が押し込まれてバラバラの状態です。耳掃除が好きな方は注意が必要です。耳掃除は程々がベストです。
耳垢が溜まりやすい体質、もしくは外耳道が狭いかどうかの判断は耳鼻咽喉医に尋ねてみると良いでしょう。
耳管開放症
原因
耳と鼻をつないでいる管を耳管といい、通常は閉じています(嚥下・つばを飲む時だけ開く)が、耳管が開いた状態のままになってしまう病気を耳管開放症といいます。 原因としては、急激な体重減少で耳管周囲の組織が痩せることや、顎関節症、妊娠、ストレス、耳管周辺粘膜の血流障害・脱水などが考えられています。
症状
自分の声がひびいて聴こえる、自分の呼吸の音が耳にひびく、耳がつまった感じがする。
診断
体位で症状が変化する(寝る・前屈で頭を下にすると症状が軽快)かどうかの問診、鼓膜が呼吸によってふるえるかどうかの観察、内視鏡での耳管開口部の観察、試験的な通気で耳管に空気が流れ込みすぎないかを確認することで診断されます。
治療
軽度の耳管開放症には漢方薬(加味帰脾湯)が有効です。内服薬で改善されない時は、鼓膜チューブ挿入術を行うこともあります。
外傷性鼓膜穿孔
原因
耳掻き・綿棒によるもの直達性のものが一番多く、次に平手打ち・殴打・スポーツによる介達性のものが続きます。
症状
激しい耳痛、耳出血、難聴、耳閉感、耳鳴 など
治療
鼓膜は再生能力が高い組織で、小さな穴であれば1週間~1ヵ月程度で自然に塞がります。耳を乾燥状態に保つこと・耳の中を清潔にすることが大切です。プールを避け、お風呂では耳に水を入れないように注意します。3ヵ月以上経っても閉鎖しないであれば手術をおこないます。
先天性耳瘻孔
生まれつき耳に小さな穴があり、そこから白い垢の様なものや臭い膿汁が出ることがある先天性疾患の1つです。
原因
母親の胎内で成長するときに通常では閉鎖している溝が完全に閉鎖せず穴となり残ってしまい、そのまま生まれてきたことが原因です。日本人に多く、その頻度は100人に2~3人程度であり遺伝性することの多い病気です。小さな穴の下には袋状のものが隠れています。
症状
①白い垢
②臭い膿汁
③(感染を起こした場合)耳前部の腫脹
治療
感染が無ければ放置してもかまいませんが、繰り返し腫れるような場合には袋本体を摘出する手術の必要があります。
低音障害型感音難聴
原因
はっきりしていませんが、内リンパの浮腫(むくみ)等の内耳の循環障害が原因との説があります。精神的ストレス、睡眠不足、疲労が発症の引き金になっていることが多いです。
症状
症状は耳の閉塞感が中心で、通常はめまいは伴いません。突発性難聴がある日突然の発症であるのに対して、急性低音障害型感音難聴は2、3日前から何となく始まった、という場合が多いのも特徴です。 多くの場合、数日から2週間前後で症状は消失します。
診断
聴力検査をおこない、低音部(1,000Hz以下)の難聴が見られるのが特徴で、ほとんどの場合は片耳だけにおこります。
治療
治療としては内耳血流の改善薬・ビタミンB12などが使用されますが、難聴が高度な場合にはステロイドホルモン剤が使用される場合もあります。基本的には経過良好な疾患ですが、自覚症状が無くなっても確実に治ったかどうかは聴力を検査して確認する必要があります。
予防
疲れやストレス、睡眠不足などが発症の引き金になるので、発症を抑えるには、規則正しい生活、十分な睡眠、ストレス解消を心がけることが大切です。また、低音障害型感音難聴は再発することがあり、何度も繰り返す場合はメニエール病非定型例と診断されることもあります。
外耳道真菌症
真菌とはカビのことです。すなわち耳の中にカビが生えてします病気です。通常 耳の中は乾いているため、カビが入っても問題ありませんが、何らかの原因で耳の中が湿っぽい状態が続くとカビが生えることがあります。
原因
過度の耳掃除が大半です。外耳道が炎症を起こして湿った状態となり、そこにカビが繁殖するのです。外耳道が耳あかで塞がれてカビが繁殖する場合もあります。
症状
耳のかゆみ・耳だれ・耳の閉塞感・難聴・痛み などです。
治療
まずは(過度の耳そうじが原因の場合は)耳を触らないこと、次にカビを取り除くことです。カビが多い場合は、洗い流すこともあります。点耳薬や軟膏で治療します。長期間(1ヶ月~数か月)の通院治療が必要です。痒みで耳を触ってしまい、再度悪化することも多いです。
カビが原因のため、良くなりしばらく経ってから再発する方が多いです。根気よく治療する事が大切です。耳そうじは「ほどほど」がベターです。
音響外傷
原因
爆発音など強大音をいきなり聞いた場合、それが一瞬であっても難聴の原因になります。 またロックコンサートなどで強大音を1〜2時間連続して聞いた場合にも難聴が発生します。
症状
強大音を聞いた直後から耳が詰まった感じ(耳閉感)や音が響く感じが出現し、それがおさまってから耳鳴や難聴に気づくことが多いようです。
診断
聴力検査をおこない、難聴の周波数・程度を調べます。病気の初期には、4,000Hz(ヘルツ)に特徴的な「C5dip」と呼ばれる聴力低下像がみられ、比較的容易に診断できます。
治療
血流改善剤、ビタミン剤、副腎皮質ホルモン剤、循環改善薬などが使用されます。また、安静を保つことが大切です。
予防
音響外傷は、偶発的な強大音によって突発的に起きることが多く、突然大きな音にさらされるため、避けることは困難です。しかしながら、強大音の予測が可能なコンサート等の場合は、スピーカーから距離を置いたり、耳栓を使用することで一定の予防効果は期待できます。
ポイント:早期治療が重要です。大きな音を聞いてしまった翌日も難聴・耳鳴が残っている場合は耳鼻咽喉科を受診しましょう。
急性鼓膜炎(水疱性鼓膜炎)
原因
風邪などがきっかけでウイルスが原因となって起こると言われていますがはっきり解明されていません。
症状
耳の激しい痛みが特徴です。稀ではありますが、水疱が破れて耳漏が出る場合もあります。
診断
顕微鏡・ファイバーにて鼓膜を観察し、鼓膜表面に水疱形成を認めます。
治療
痛み止めを処方します。細菌感染を起こしている場合は抗生物質を投与します。
外耳道真珠腫
原因
古くなった皮膚の塊(角化上皮)が、外耳道に異常に堆積。そこに炎症が起こることで病変部分に皮膚上皮細胞が侵入して、骨が露出した状態となります。外耳道に白い物質が充満真珠のように見えるので真珠腫と言います。
症状
耳だれ、慢性の鈍い耳痛みなどです。稀ではありますが、骨の破壊が進行した場合 難聴、開口障害、顔面神経麻痺などを生じることもあります。
診断
外耳道に多量の角化物の堆積を認める。また、それらを除去した際に骨欠損・骨破壊を認めた場合に外耳道真珠腫と診断されます。CTで病変の進展を把握することもあります。
治療
堆積・増殖した真珠腫を定期的に除去することで病変の進行・拡大を防ぎます。 放置すると外耳道の骨の破壊が進行するため、指示されたとおりに定期受診→除去することが必要です。
サーファーズイヤー
原因
サーフィン等の水上・水中スポーツや潜水の際に、冷水刺激が長期的繰り返されることで、外耳道の骨が増殖し、耳の孔が全体的に狭くなると考えられています。
症状
初期の頃はほぼ無症状です。狭窄が進むと耳垢等が溜まりやすくなります。
診断
問診や外耳道所見から診断は容易です。外耳道の骨隆起が進行し狭窄を起こすと聴力悪化することもあります。
治療・予防
予防は耳に冷水を入れないことです。耳栓をお勧めいたします。病状が進行して骨隆起がひどい場合は、手術で骨隆起を削る場合もあります。
航空性中耳炎
原因
耳と鼻をつないでいる管を「耳管」といいます。通常は閉じていますが、嚥下やつばを飲む時だけ開いて圧の調整をおこなっています。飛行機の上昇・下降に伴い圧が変化しますが、風邪やアレルギーで鼻の粘膜が腫れると、圧調整がダメで耳の内部(中耳)に炎症や出血を起こすことがあります。これが「航空性中耳炎」です。
症状
(飛行機の上昇・下降時の)耳の痛み、耳の詰まった感じ、難聴です。
治療と予防
繰り返し起こすことが多いので、事前の予防が重要です。風邪をひいたり、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などがある人は予め治療をして「搭乗前に鼻を整えておく」ことが最も重要です。
機内で症状が出だしたら、飴を舐めたり、唾を繰り返し飲んでみます。不変の場合は、鼻をつまんで唾を飲み込む 「トインビー法」をおこないます。着陸後も症状が続く場合は耳鼻科を受診しましょう。薬で治療しますが、重症の場合は鼓膜切開をおこなう事もあります。
着陸して翌日も耳症状が続く場合は耳鼻咽喉科を受診しましょう。
潜水性中耳炎
原因
ダイビングなどをした時の水圧が原因で耳抜きがうまく出来ない場合に起こります。
症状
耳痛・耳閉感・難聴 など
診断
問診や鼓膜所見から診断は容易です。
治療
通常の中耳炎に対する治療と同じです。細菌感染を伴う場合は抗生剤、抗ヒスタミン薬、消炎酵素剤などを使用します。風邪や鼻炎がある人はその治療ももちろん重要です。痛みなどの急性症状は数日以内に改善しますが、耳閉感、難聴は改善するまでに数週間かかることがあります。薬による保存的治療で症状が改善しない時や、中耳に貯留液や膿を認める時には、鼓膜切開を行います。
予防
ダイビングの耳抜き法には、
- バルサルバ法
- 嚥下(えんげ)法
- トゥインビー法
- フレンツェル法
など様々な方法があります